建築

建築雑誌3月号にインタビューが掲載されました。


明治20年から続く日本最古の建築メディア『建築雑誌3月号』にインタビューを受けました。「ケンチク脳の活かし方」と題された連載インタビューの対象は、ロボット工学など建築以外の分野に進んだ建築学科卒業生。ここで僕は、広告を建築的にとらえるという一風変わった考え方について話しました。テキストの全文転載について許可をいただいたので、ご興味あればぜひ。編集部の皆様に感謝します。

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全文掲載はこの先に。


ケンチク脳の活かし方 no.7

複雑化する広告コミュニケーションを設計する
Designing Increasingly Complicated Ad-Communication

電通のクリエーティブ・ディレクター阿部光史氏はCMプランナー時代に大ヒット作品、アイフルの犬の「くぅ~ちゃん」シリーズを制作。またチームを率いてTV情報サイトテレビドガッチに「豆しば」のキャラクターを誕生させた生みの親である。

企業コミュニケーションを考える

阿部─僕はコピーライター兼CMプランナー出身で、現在はクリエーティブ・ディレクターとして、戦略に合わせてCMプランナー、コピーライター、アートディレクター等を束ねる仕事をしています。最近はネスレの「珈琲の恵み生豆茶」を制作しました。クライアントと折衝する営業、戦略を考えるプランニング、企画制作を行うクリエーティブが三位一体でコミュニケーションを考えるのが広告代理店の役目です。ここにテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ウェブなどの媒体が加わり、広告コミュニケーションを実施しています。

初田─CMと言わずにコミュニケーションと言われるのは何か意図がありますか。

阿部─企業のCMがそのまま支持される単純な時代ではなくなり、人々が広告にどう反応するかを考えて全体的なコミュニケーションを計画していかないと、人は動かないし商品も売れないんです。以前はCMとそれに付随するポスター、交通広告、カタログなどの印刷物の制作がメインでした。今はそこにウェブが入り、PCやモバイルにも対応し、拡大するソーシャルまで用いて、いかにコミュニケーションを活性化するかを考えなくてはなりません。

初田─影響を受けた建築家や、この仕事を選んだきっかけを教えてください。

阿部─学生時代からSFのビジュアルが好きでした。そのころ、表参道にできた髙﨑正治さんの「結晶のいろ」という建築に共鳴し、彼が師事したグラーツ工科大学のギュンター・ドメニク設計の建築をウイーンまで見に行きました。ベルナール・チュミやザハ・ハディドも好きでしたね。そういう変わったデコン建築や最新テクノロジーに惹かれていました。卒業後、広告業界に入ったのは第一志望の電通に受かったから。当時建築家は「40代で若手」と聞き「20年下積みか」と思い怯んだのもあります(笑)。最初から現役でモノをつくる仕事をしたいなと思って。数十年残る建築と違い、広告は短いスパンでつくり消えていくことを繰り返すなかで考える鍛錬になるかとも思いました。電通で修業し建築家になるのもいいなぁと。かつての博覧会の流行で社内には建築出身者もいて、実は電通は一級建築士事務所でもあるんです。

イメージの建築としての広告

阿部─広告は表現だけでは成立せず、その背後に目的や考え方を示す構造体が必要です。構造が弱いと、いくら人の目に触れる化粧をしてもうまく企業像を結べません。その意味で、広告や企業のコミュニケーションをイメージの建築ととらえ、戦略としての強固な構造体をつくり、時代に合わせて内・外装をリニューアルしていくのが僕らの仕事です。こんなふうに建築のメタファーで理解することが多いんです。

初田─最新技術との連携が必要だという最近の建築界の動向は、CM業界にも当てはまるでしょうか。

阿部─コミュニケーションは非常に複雑になっています。今は皆が同じサイトやバナーを見るのではなく、コンピュータがCookieやCashに残った受け手の属性を解析・識別し、その人に合う情報を自動生成して送る時代。Google等はそうしたことを始めてます。イメージの建築は、時間軸のなかで刻々と形を変えながら複雑な構造体を維持しなければならないという、難しい命題もつきつけられています。

初田─建築学科の学生に対するメッセージをいただけますか。

阿部─「世界に飛び出せ!」ですね。海外の大学院で学んだり、資金の動くアジア等に市場を広げる余地はあるのでは。同じコンペティティブな世界にいる者として、ゼロから創造する仕事は楽しく苦労の甲斐があると思います。建築以外の仕事でも、インストールされたケンチク脳は便利で、建築の考え方や体系の勉強は無駄にはなりません。

2012年11月26日、電通にて

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